モンターグの貸出票

返却期限を過ぎました。

他力本願

 年明けに「読書頑張りたいですね。ユリシーズとか」などと言っていた私は死にました。あれから3ヶ月と少し、未だ一冊とて最後の頁まで捲れずに読み散らかした数冊。バイキングレストランで調子に乗った私です。
 悠久の中で忘れ去られた山の頂二歩手前に小さな洞穴があるそうです。その中にはどうやって生活しているのかわからない老婆がいて、彼女は魂を浄化する巫女の末裔だと、サイゼリヤで昼間から安ワインでベロンベロンの年配男性が教えてくれました。私は是非ともこの自堕落さから逸脱したいと考えました。地図をもらいました。日本地図でした。この辺と指をさしてくれたあたりの男性の指紋に自家製アルミパウダーを振りかけて筆で丁寧に落としていくとその場所が浮かび上がりました。某県全域でした。私はとりあえず地図を破り捨て新幹線に乗り件の場所の県庁所在地最寄駅に下車しました。県の職員の方々に「頭のおかしい奴が来た」と白い目で見られながらも私は山について、老婆について些かでもヒントを得ようと必死さを訴えたのです。然し乍ら案内されたのは町の大学病院でした。ある意味優しさを感じながら私は当て所なく彷徨いました。するとどうでしょう。疲れました。老婆のことなどどうでもよくなりました。帰ろう。今日はーー新幹線でぇーー……帰ろうっお(スタッカート)。
 自宅に着くと日が変わっていました。ズタボロでした。私の部屋には沢山の本がひしめいています。一冊を手に取りました。他愛のない表現であるそれは私を涙させました。なんでこんなことに……本の内容よりも溶けた交通費とそれが本来なら充てがわれたであろう生活ばかりが気がかりでした。それも疲れがどうでもよくさせました。私はそのまま眠りごち夢を見ました。そこに現れたのはなんとあれだけ追い求めても見つけられなかった山の洞穴でした。私は中に入りました。夢でもいい、夢で逢えたら。そこにはあのサイゼリヤの酔っ払いが気持ちよく寝ていました。その横に達筆な字で「スカ」と書かれた半紙が落ちてありました。
 目が覚めて、目が覚めました。読書頑張りたいですね。
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