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モンターグの貸出票

返却期限を過ぎました。

曲がり角の因果律

随筆
 ハニワを飼っていた。というか今も実家にある。祖母の遺品だ。母の実家を整理している時に「これをくれ」と言った私だ。当時十代にもならない私は『ハニ太郎です。』という漫画にハマっていた。下品な漫画である。ガキの喜びそうなウンコとかがいっぱい出てくる漫画である。本作の登場人物、吉田よしおはカレー容器からハニワを発見する。そのハニワがハニ太郎で、性格は傲慢な支配者体質。よしおはそんなハニ太郎に金縛りにあわされたり下痢体質にさせられ悲しい人生を歩むこととなる。
 漫画の内容はさておき私はハニワを手元に置くことがステータスのように思っていた。タイムリーに発見された祖母のハニワは必然に私のものになった。ほこり臭いハニワを丁寧に濡れ布巾で磨き上げ学習机の最上段に飾った。それでとてもいい気分になれた。その夜初めて金縛りにあった。感動した。ハニ太郎や!と思った。○○歳まであわなければ一生ならないとかいう金縛りにあったことで私は今後の人生に金縛りというリスクを背負うこととなる。
 時は流れて二十代。私は大学生だった。短い恋に散って自暴自棄だった私を慰めようと先輩(女性)二人が私の部屋にやって来た。本当は飲み会終わりに帰る電車がなくなって都合のいい屋根の下を探していただけの先輩たちである。こいつらという感じだ。兎にも角にもそのような状況下で迎えた夜である。出来心がないといえば嘘になる。先輩二人に安住の地(ベッド)を奪われ床に這いつくばった私は寝たフリ決め込んで期を待った。案外元気な先輩二人は中々寝ないで、単純に眠い私はいい加減に寝ろてめえら!と激昂した。そして私が先に寝た。しかしリビドーの神はしぶとい。部屋も随分静かになったのを知覚した。私は素晴らしいタイミングで覚醒したのである。
「ワンチャンあるで」
 私はもう頭がおかしくなっていた。失恋の痛手にバーバリアン2号と化した私は鋭い目つきでいかがわしい思想をもった。
「これより全ての力を解放する!」
 私は上体を起こそうとする。デーモンの召喚である。重要なことなのでもう一度言う。デーモンの召喚である。テストに出るからもう一度だけ言う。デーモンの召喚である。動かない。身体が全然動かない。言うこと聞かない。どうしたデーモン!おまえが蝋人形になってどうする!?金縛りだった。そう私は○○歳までに金縛りを経験しそのリスクを背負いし者であった。因果!因果すぎる!動け!動けったら!初めてモビルスーツに乗った後の英雄状態の私はまだその時になかった。あの日私がくれと懇願したハニワが脳裏に浮かぶと一筋の雫が頬を伝った。

「おはよう」
 先輩が目覚めた時、私はカーテンを開いた窓際に立ち小鳥(太めの鳩)のさえずりに耳を傾けていた。
「おはようございます。みてください。快晴です。太陽に感謝」
「朝からキモっ」
 既に慈愛の使徒たる私には痛くもかゆくもない言葉であった。

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