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モンターグの貸出票

返却期限を過ぎました。

五月四日

随筆
 同窓会のため帰郷。段々と田舎めいてくる電車の窓越しに見る景色。イヤホン越しに流したBob Dylanの『Don't Think Twice It's All Right』が見事に溶ける。殆ど人のいないプラットホームが優しい。
 まだ会まで時間があったので車を走らせ近くの大型スーパーへ。フードコートから漂うクレープの匂いが甘ったるくて、それがいいとかではなく帰ってきた気分にさせた。品揃えの決してよいとは言い難い書籍コーナーもそれはそれで今までなら見向きもしなかった本を発見させる。しばらく立ち読みして飽きたので結局は何も買わず、とりあえず奥の方に進んでいくと「ドリームランド」と安っぽい名前のついたゲームコーナーがある。財布の小銭を適当にメダルに替えてメダルゲームで遊ぶことにした。レールから滑らせて手前の穴に押し出して落とすやつだ。勘を取り戻すまでに闇雲に消費したメダルはそれがそのまま財布から消えた実質の金銭に比例するわけだが、なんだか意地になって無意識に両替し過ぎた。二千円くらい使ってしまって、これがもし子供の時分ならひどく叱られたろうななどと考えたりした。あともう少しでガサッと落ちそうなメダルを前に目を血走らせていた私の闘気みたいなものに引き寄せられたのか客としてドリームランドで遊んでいた子供達が周りに集まってくる。少々鬱陶しく感じたせいか集中力が掻き乱され、両替用にと積んでおいた百円硬貨を間違えてレールに投下するという失態を犯した。私は子供を一人呼びつけ勝手によしおと名付け、よしお(仮名)少年に両替を命じた。
「よしお!これをメダルに替えてきてくれ!」
「ラジャ!」
 よしお少年が中々メダルを持って戻らないのでふと見渡すと別のゲームで私のメダルを使用していて、怒るというより笑ってしまった。いい大人が子供を使い走らせたバチがあたったというわけでそのメダルはよしお少年にくれてやることにして再びメダル投下を続けた私だったが気づくと会に遅刻しかねない時間だった。
「メダルが欲しいか?」
「うん」
「ならくれてやる!」
 などと皆川亮二『ARMS』のパロディを興じ子供達にメダルをあげてそのまま同窓会に向かった。

 私の予想としてはもう少し年相応の会になるかと考えていた。しかし会えば皆十八のままだった。以前大学時代の友人とあったときにも思ったことだが、あれから十一、二年の月日の経過と環境の変化があってもノリみたいなものは不変なのである。胸を張って酒が飲めるようになったところでそんなものがなくとも間持ちする関係というか、終始愉快な気持ちだった。体力はきついはずなのに気持ちは余って夜を明かすなどと無茶をした。結局こうして日記としたためるのはあれから半日以上を眠って捨てた馬鹿な私である。
 また戻って行かねばならない。プラットホームにはやはり人が少ない。行きは優しさだったそれは、今となっては寂しさに思わせる。
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