モンターグの貸出票

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ガムを踏む

 マラソン大会。一緒にゴールしようね、マミカちゃんはそう言って先頭集団。あたしは置いてけぼりの殆ど最後尾。本気出してこれ。マミカちゃん?どうしてあんなこと言ったの?そんな質問も届かない二人の距離。にしてもゴールはどこ?全然見えない。半分歩いてる。

 途中の河川敷。男子が相撲を取ってる。行司のテンションがやけに高い。諦めた人たち。楽しそう。またその先では絵を描いてる子がいる。聞いたら「空が綺麗だから」だって。意味わかんない。スケッチブック持参かよ。ケーカクテキハンコーじゃん。

 向かいから逆走してくるグループ。あの人たちも諦めたのかな。だったら律儀に来た道戻るの馬鹿じゃん。ほんと馬鹿。その後もあたしは諦めた人たちを尻目に順位を上げてった。ゴールはまだ見えない。だけど諦めた人たちは結構な人数だった。だからあたしはまあまあ上位に食い込んでいると思うんだ。半分歩きながら前を目指す。どうして頑張ってるんだろ?もっと子供の時から変に律儀だった。給食は残しちゃいけないっていうから溢したシチューを手ですくって飲んだ。なんでかお母さんが怒って、先生がいなくなって給食は残してよくなった。あたしはルールを守っただけなのにいなくなる直前の先生はキッとあたしを睨みつけた。まあ二度と会わないからいいんだけど。

 ずっと進んでくとマミカちゃんがいた。疲れて座ってる。

「マミカちゃんも諦めるの?」

「あんた馬鹿じゃないの?コレ、ゴールないんだよ!聞いてない?やってらんないじゃん」

 あたしはマミカちゃんの言いたいことがわからない。だってこれは学校の行事であたしたちは頑張る義務があるんだから。

「マミカちゃん、見損なったよ」

「あそう、で?どこ行くってのよ?」

「ゴール」

「だからそんなもんないんだってば!ずっとやってろよ!馬鹿!」

 あたしはそれ以上何も言わずマミカちゃんを置いて前を進んだ。もう先には誰も見えない。あたしが一番乗りかな?ゴールしたら美味しい豚汁が待ってるかな?余計なことを考えてたらガムを踏んだ。誰だよ。汚いな。でもガムが落ちてるってことはまだ先に誰かいるのかな?頑張らなくちゃ。

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