モンターグの貸出票

返却期限を過ぎました。

BABY IN CAR

 僕は助手席に彼女を乗せて車を走らせる。僕の最愛の人。僕は彼女との血のつながりに感謝する。僕と彼女が家族である。その事実が僕にとっては最大の幸福であると信じて疑わない。

「どこに行こうか?」

 ちょっと不安げな彼女は言葉がおぼつかない。今にも泣きそうな顔をしながら僕の運転を見つめていた。若干の潤みをおびたその瞳はどんなジュエリーより煌めいて僕だけの宝石なんだと思うと嬉しくって思わずアクセルを加速させてしまう。ブオン!おっとっと、ハンドルが疎かになっていた。どうも僕にはアクセルとハンドルを同時に操作するのは難しい。もう少し足が長ければな。彼女がハンドルに手を伸ばそうとするので「危ないよ!」と僕はブレーキを力いっぱい踏む。キキキキキィーー!!車は急停車。彼女は体制を前のめりにさせて顔を強張らせた。僕は反動で運転席の下で頭をぶつけた拍子にかすり傷を負ったみたいだ。でも僕より彼女が心配だ。僕は頭から血を流して彼女の元に寄った。泣かないで僕の愛しいお母さん。

「もうこんなことやめて」

「どうしてそんなことを言うんだい?僕はお母さんと一緒にドライブがしたかったんだ。乳母車にさえ乗れなかった僕の気持ちをわかってよ」

「お願い!もうやめて!ごめんなさい!ママを許して!」

「どうして泣くの?僕は……ずっと一緒にいたいだけなのに」

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