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モンターグの貸出票

返却期限を過ぎました。

墨流し

随筆

 もう日が経つけれど、万年筆を洗った。どうやら万年筆は折にふれて洗わないといけないということでやってみようと思った。洗う万年筆は二本。誕生日に買ったペリカンと、その前から持っていたエルバンの安いやつ。ペリカンは吸入式といって尻のノブを回してインクボトルに浸したペン先からインクを吸い上げるのだけれど、洗う際も同じ要領でインクの代わりに水を吸い上げては吐き出しといった感じでやる。

 早速コップに入れた水にペン先を浸すとそこにインクが溶け出してマーブル模様を作った。それがどうにも綺麗である。水の中で静かに流動するインクは原生生物のようだ。しばらく眺めた後、それをかき回すと水は一気に苔色に染まる。それを何度か繰り返してあらかたインクを吐き出したペンに付着している水滴を布で拭き取ってみればなるほどと頷くものがある。そこに芽生えた愛着について。単に文具の一本ととどまらない何かを感じる。言ってしまえばペン一本を洗うなど面倒この上ない手間だろうと感じていた。ところが実際にやってみるとただただその作業に没頭する自分がいて、そのことより他に考えなど過ぎらなかった。ペンを水洗いするという感覚が新鮮だったのかもしれない。いつかはそれも忘れて飽いてしまうのかもしれない。もう一本も洗ってみては、いまだそこに興味が残っているのを確かめていた。

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