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モンターグの貸出票

返却期限を過ぎました。

acknowledge the elephant in the room

「ねえ!みてみて!ネンド象!」

「どうみてもストーンヘンジなんだけど」

ストーンヘンジっナンジャコラ!象じゃん!ちゃんと俯瞰してますか?ゾ・ウ・じゃん!」

「駄洒落を思いついたまでは良しとしよう。そのためにわざわざ粘土を買ってきた姿勢も涙ぐましい。ゆえに君の芸術表現に対する才能が惜しい。ストーンヘンジです」

「貴様、我がネンド象を愚弄するか?ならば我とて容赦はせんぞ!ネクロマンシスエロエロエッサイムエコエコアザラシカクマクマヤコン……」

「呪殺のつもりか?なぜ私にこのストーンヘンジを披露しようと思ったのだ。ドヤ顔で3つに割った粘土をまず2つだけ立てて置き、そこに渡すように最後の一片を乗せただけのストーンヘンジストーンヘンジを?」

「何回言うねん!わ、わたしはただ……世界が美しくあればいいと願った。あの日、あの夜空に光った星々はわたしのそんな願いを祝福していた。だのに!だのにだ!なぜこうも貴様は我がネンド象をただの石塊と愚弄するか!?貴様には人の心がわからぬのだ!それでも学級を束ねる長を騙るか!戯け!」

「今私がクラス委員長であることと君がこさえたストーンヘンジストーンヘンジだということの関連性を述べてくれないか?君とまともに議論する気は無いが、けれど私が気がかりなのは私の人生において君という存在を不意に思い出しては何だか可哀想になる気持ちをこの際振り払っておきたいただその一心だ」

「鮭川くん」

「……!? なんだ唐突に!」

「鮭川くん、私は貴方が好きです。誰よりも親よりも」

「お前!お前!」

「貴様が鮭川昇に宛てるつもりの恋文の中身、わたしは把握しています」

「な!?ど!誰だ!私はお前だけには知られまいと……なぜ……貴様ぁあああ!」

「さあ、そなたが前に君臨せしこの雄々しき生物が名を言ってみよ!さあ!さあさあ!」

「違う……ありえない!私がお前ごときに屈伏させられるなどあってはならぬ!ならん!!」

「鮭川くん、どうしてあなたは鮭川なの?私はシャケの皮は残す派です。けれど貴方を見過ごせない。私の目は貴方を常に追っています。これが恋?シャケ?鯵?」

「やめろぉおおおお!それ以上の発言は許さん!」

「ならば言うてみせよ!ネン(nun)……ド象(dadau)」

「ネ……ネ……ネン……」

「カッカッカ!苦しいか?辛いか?涙袋を撼わす顔が健気よのう!さあ言え!さすれば貴様の痴態は我が墓中まで秘匿されよう!」

「おのれ……くっ!はああん、ネン!ドゾォォォおおおお!!」

「あーっはっはっはっは!あーっはっはっはっは!我が勝利!」

「何これ?石?」

「お前!鮭川!?」

「菊永が作ったの?この石。え?なんで花崎が泣いてんの?」

「んなこたどうでもいい!わたしのネンド象を石と言ったことを訂正しろ!」

「象?石じゃん。百歩譲って粘土だろ」

「ガッ!デェエエム!おい!いいか?この花崎はな」

「やめろぉおおおお!」

「お前のことが好」

「知ってた。知ってたよ。けどなんかそういうの確かめるのって小っ恥ずかしいだろ。だから待ってた。これもちょっと恥ずかしいけど。でもさ、嬉しいよ。正直嬉しい。あ、やっぱそうだったんだって今飛び跳ねたいくらいだよ。まあ、ありがとな。菊永」

 

 ちがう。わたしはどさくさに紛れてお前に告白しようと思ったんだ。花崎はお前のことが好きだけど、わたしはそれよりももっと前からお前が好きだって、そう言おうとしたんだ。卑怯だって笑われたり罵倒されたりしたのかな?それでも言ってやろうってそう思ったんだ。けどやっぱダメか。わたしの負けじゃん。石は酷くないか?象なんだけどなあ。