アントーニオの肉一ポンド

返却期限を過ぎました。

『Lies of P』嘘をつき倒しました

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 イタリアの童話『ピノッキオの冒険』の世界観をモチーフとした韓国産アクションRPGである本作はフロムソフトウェアの代表作『ダークソウル』等に見られるソウルシリーズを踏襲するソウルライク作品となっており高い難度を設定された所謂死にゲーです。この手のジャンルは何度も敵に倒されながら徐々に相手の動きやマップの配置を覚えて攻略を目指すというのが醍醐味となっております。

 

 これらを踏まえた上でこの『Lies of P』がどんな内容のゲームだったかを話すととても難しい!!そして無茶苦茶気持ち良くない!!

 初手文句です。但しそうは言ってもだから面白くないと直結するわけではないです。それでは『Lies of P』の良いとこ悪いとこを話していきましょう。

 

 まずは良い点。なんといっても本作、それはもうソウルライクです。真新しさなど微塵の隙もないです。それが良い点なのかとなるかもしれませんが私は妙なオリジナリティを発揮してソウルシリーズのシステムが持つゲーム性を阻害しなかったという点においてかなり評価しています。ソウルライクを期待して臨んだものとしてはそのクオリティに関して大変満足できるものでした。あーダクソやってんなあという気持ちにしてくれます。

 ここは良し悪し関係なく申し上げますが、いいですか。ダクソです。ブラボではありません。SEKIROではちょっとあります。ブラボではないです。ダクソです。これで察してください。

 次に世界観。こちらはピノッキオをモチーフにしたダークファンタジーということで元々童話と暗黒的なものには親和性が高く、例えば「本当は怖いグリム童話」などのようにそれらの原作といえば寓話の中に当時の歴史的背景を含んだ残酷さが織り交ぜられています。本作はそういった部分の落とし込みが抜群でピノッキオを主軸に陰鬱な空気が心地よく漂っております。シナリオの随所に原作を踏まえた設定が施されながらそれでいてしっかりとした物語になっています。その中で動き回るキャラクターも味方は美麗で敵はグロテスクと大変わかりやすい対比。ボリュームもあってスムーズにやっても2、30時間は遊べるんじゃあないでしょうか。

 細かい部分で言うと、エスト瓶つまり回復薬ですが本作におけるパルス電池は実質無限です。ソウルシリーズではこれを使い切ってしまうと一度篝火(セーブポイント)に触らなければ復活しません。ブラボに至っては周回必須の有限資源です。ライズオブPでは仮に回復を全消費しても敵に攻撃することでパルス電池が充電され満充電されると1回分復活します。これによって絶望値が若干緩くなり、回復を惜しまず果敢に攻めるという選択をプレイヤーに与えている。これは今までになかった部分なので「ライズオブPやるやん」という点ですね。

 また武器ですが、基本的に刀身と柄を他のものと付け替えれるようになっています(一部特殊武器を除く)。刀身は火力と属性、柄はステータスの補正値と攻撃モーションを担っており、それらをカスタマイズすることで単純火力にビルド補正を乗せたり自分が使いやすいモーションの武器に変更出来たりするのです。これによって自分の好みを探す楽しみが生まれたり少ない資産で武器強化出来るのも良い点です。私の場合は〈酸性の大曲刀ブレード〉に〈ブースターグレイブの柄〉を組み合わせたものを技量特化で使ってました。見た目も産業革命薙刀(?)という感じでカッコいいのですがガードによるダメージ軽減率も高くリーチもそこそこあり、刀身が大剣で敵を怯ませやすい反面振りが遅くスタミナ消費も大きいといったバランスの良さが気に入ってます。このように「俺が考えた最強の厨二武器」を見つける楽しさが本作にはあります。

 

 

 さて問題はここからです。本番と言ってもいい。冒頭で大声をあげて叫んだライズオブPが気持ち良くないと思われる由縁を話していきます。

 第一に本作におけるジャストガードといったアクションの重要性を説くと、これは敵の攻撃に合わせてタイミングよくガードを入れることで通常ガードならばいくらか持ってかれる体力を消費することなく弾き返すことができます。またSEKIROのように相手の体幹を削りスタッガーを取って致命攻撃へと発展させる役割をも担っておりジャストガードを上手く決めることで戦闘時間を大幅に縮められる仕組みになっています。さてこのジャストガードまあ決まりません。というのも本作の敵はこれでもかというくらいディレイを多用してきます。ディレイとは攻撃のヒットタイミングを振りモーションから微妙にずらしてくる陰湿行為のことです。雑魚モブでさえこの有様でステージによってはボスより鬱陶しい中ボスが存在します。このディレイによってジャストガードを狙うタイミングがかなりズレるので目視というよりかは手癖で合わせることになります。と思いきやそのディレイに慣れた頃には同モーションで振り速度だけ変えてくるバカなことを平気でやってきます。いとも容易く行われるえげつない行為、D4Cです。ジャストガードの判定はただでさえシビアなのにタイミングずらしてずらして敵だけが楽しい時間が延々と流れていくのを我々はブチギレながら眺めることになります。なら回避メインで立ち回れば良いのでは?となりますが基本的に回避性能はカスです。ある程度進むと多少強化できる要素が解放されますがとはいえ序盤はスタミナ消費が厳しく回避をメインに置くとあっという間に疲れ果てます。そこに容赦なく異常射程で距離を詰めてこられるのであっという間にLie or Die 死です。もう言いたくありませんがフューラルアタックと呼ばれる通常ガード出来ないジャスガでなければ受けれない攻撃まで存在し、間合いによっては覚悟を強いられます。挙句ジャスガも許さない投げ攻撃に至ってはフューラルアタックのように赤い発光を放つ予兆もなく初見時は覚悟もさせてくれません。このようにプレイヤーは幾度も敗れることになります。死にゲーですからそれは致し方ありません。ですが……ですがです。よっしゃ次!!とはならんのや。覚えることが多いのに殆ど見れないまま死ぬ場面が多く、ようやくスタッガー決めれるチャンスが訪れても敵が途端暴れ出し追撃を許さないこともあってもうストレスが半端じゃないです。

 ジャストガードは確かに重要です。その割にリスクがかなり大きくリターンがあまりに低いので結局正解といったものが見えづらくなってしまってます。意地でもジャスガのタイミング見切ったほうが近いのか、ガン逃げしてチクチク殴ったほうが近いのか、そのことに気づくまでの時間がもう遠い。偶然パンチで勝てることもなくはないですがしっくり来ないんですよね。勝てたという喜び自体は残るがそれ以上も以下もなく「結局あいつはなんだったんだ」となってしまうのは強ボスと対峙した重圧から解放されきれてない気がしてしまいます。

 ボスに関してはもう一点。中盤以降基本HPバー2ゲージです。第二段階が多すぎる。召喚士は通す、ガードも通す、初見プレイヤーは通さない。ロンゾの面汚しである我々はまたしても何も知らされず倒しきったはずのボスが全回復&モーション全様変わりして突っ込んできます。終盤は逆に知ってたとなります。知ってたからといって出来ることなどほぼありませんが。良い点で申し上げた回復薬実質無限ですが溜まる前に逝くので心配しないでください。

 初見殺しという点ではマップもですね。とにかく落下罠が多い。落ちたらそこはもちろんモンスターハウスです。ロンゾの面汚しである我々はこのようにして迂回を強要されることになっていきます。マップの作り自体は無茶苦茶悪いわけでもないですが随所にカッタイ中ボスが配置されており超高校級の絶望が間髪入れてくれません。そいつらは何故か次の経路への鍵になっていたり重要な強化アイテムを持たされており倒さなければといった義憤に駆られるわけですがたまになんもないのがいて笑います。もう笑ってしまいます。

 

 さて良い点と悪い点を幾つか挙げてきましたが、まだまだ言い足りない部分もあります。通しでやってみた感想としては上記のような惜しさも感じつつ、それでもソウルライクとしての出来はかなり高い作品だと感じました。文句言いながらもこの歯応え、難易度に熱くなったのも事実です。ですからもしこれを読んでいただいてライズオブP気になってはいるけどどうなんだろう?と迷われている方がいらっしゃったら私は強く申し上げます。

 

SEKIROやれ