アントーニオの肉一ポンド

返却期限を過ぎました。

FF16クリアしました(完全版)

 FF16一先ず1周目クリアしました。なのでできるだけネタバレ回避して感想を残しておきたいと思います。ちなみに私はファイナルファンタジーのナンバリングタイトルだと9までしか手をつけておらず今作は久々のファイナルファンタジーであることを断っておきます。

 

 いきなりですがFF16はおもしろいのかどうかを私の中ではっきりさせとこうと思います。私の意見は「めちゃくちゃ面白かった」です。久しぶりのファイナルファンタジーというビッグタイトルに正直なところ不安もありました。過去のシリーズでの体験なども鑑みるとどうしても期待してしまう。はじめて7を触った時の感動は当時のものでしかないけれどずっと残っているので、このおぼろげな記憶と今やろうとしている16が同じ看板である以上はそうなってしまいました。ただそんな不安はゲームが始まった途端払拭されたように思います。主人公クライヴ・ロズフィールドの復讐を起点とする重厚な背景の前では余計な考えなど過ぎらずただただ物語の行末に没入していました。

 

ゲームシステムについて

 本作はこれまで(少なくとも私がプレイ済の)FFと異なり敵とのバトルにおいて基本アクションゲームとなっています。コマンド選択に応じてキャラクターの行動が決定しターン制で進む従来のFFとは大きく異なる感触でした。SNS上ではデビルメイクライの名前がよく挙がっているように思ましたがまさにそんな感じです。ただよくよく見てみるとFF16もまたコマンド制ターンバトルの色香は残されておりそこにシリーズの精神を感じました。確かに見映えや操作感はアクションなのですが敵の動きには法則性があり、見極めると待つべきタイミングが生じます。ここがつまり相手のターンみたいなもので、その一連が終息すると反撃のチャンスが与えられ自身の有利タイミングになります。実際は手持ちのポーションなどでゴリ押せたりもするのですが例えばノーダメージクリアなどを意識するとより攻守の拮抗が感じられると思いました。そう考えるとバトル一つとっても楽しみ方に幅がありプレイスタイルが出るところではないでしょうか。アビリティをカスタマイズしてコンボを開発するのも楽しいですしね。

 微妙な点も挙げておくと難易度の面からいえば1周目はそう難しくもないところで設定されています。ストーリーかアクションのどちらを重視するか選択できますがこれをアクションに設定してもゲーム慣れしてる人はそう難しく感じないでしょう。ゲームが進むにつれてシステムに慣れてくればくるほどそこは如実で、ゆえに単調な、所謂作業的なバトルだと感じてしまう方もいるかもしれません。個人的には勝つか負けるかのヒリヒリした緊張感を求めてしまうので無闇にレベル上げをせず抑えたけれどもそんな感想を持ちました。反対に言えばアクションゲームにそれほど自信がない人でも楽しめる敷居の高さにはなっていると思います。一部の操作をオートにするアイテムなどもあり出来るだけ多くのプレイヤーに作品を見届けてほしいという製作陣の想いは伝わってきます。

 また本作の魅力の一つである召喚獣バトル。これはそうですね。いい意味でバカです。デカブツの怪獣がスピーディーに暴れ回りながらドッカンドッカンぶつかり合うところは見ているだけで胸が高鳴ります。これがゲームプレイとなると長いと感じる方もチラホラ見かけましたが確かに疲れます。それぐらい濃い体験をやってるといえば良く言い過ぎかもしれませんが総評すると楽しさが増すところで中々他のゲームで体験出来るものでもないのかなと思います。これはFF補正もありますが召喚獣ってのはこれくらいダイナミックな戦いをしてくれるんだとイフリートやバハムートの立場から感じられるドミナントの設定は素晴らしいと思いました。ドミナントの力についてもう一歩踏み込んで話すと本作は基本的にクライヴ以外だとトルガルに指示が出せるくらいで操作出来る仲間というものが存在しません。ジルやシドなど道中で戦闘に参加してくれる仲間は存在しますが存在感はオマケ程度。従来のFFのようにパーティー編成を楽しんだり思い入れあるキャラクターを育てたりすることは出来ません。アクションゲームの特性上同時に複数のキャラを操作することはほぼ不可能なのですが、そこでドミナントというわけです。ドミナントとは召喚獣を自らに憑依させる異能者達のことを指します。クライヴは物語の途上で彼らと出会い様々な経緯の先でその力を引き継ぐことになる。それらはクライヴのアビリティとしてバトルで使えるようになるのですがこの流れが疑似的なパーティー要素となっています。FF16の魅力ある登場人物達を操作することは叶いませんが能力だけは発揮できるわけです。そういう意味で考えると私の最終的なパーティー編成はクライヴ、ジョシュア、ジル、フーゴでした。フーゴ(タイタン)のアビリティ気持ち良すぎるだろ。

 マップやダンジョンに関しては進行がほぼ一本道で寄り道としてはサブクエがあるくらいで特に探索などする必要がありません。大変親切ですが好みは分かれると思います。宝箱は開けても大したものが入っておらず、装備はストーリーが進むに連れて勝手に強くなってくるので大陸を巡る楽しみは殆どないと言っていい。武器ステは攻撃力とウィルゲージ(敵の耐久力)削りくらいで縛りでもしない限り数字の大きい武器が正義になってしまいせっかくそれぞれ固定グラがあるのにすぐ弱武器になるのは少しもったいない気もしました。リスキーモブなる強敵の配置はありますが隠しボスというほどでもなくどこかのダンジョンに最強装備が眠っているようなことも特になさそうなので、強いてあげるならブドウや市場の野菜のグラがいいとかトルガルと散歩できるとかまあそのくらいです。ただ前述したサブクエに関しては出来る限り回られることをオススメします。サブクエといえば特にストーリーには抵触しないオマケ要素みたいな印象がありますがFF16に至ってはガッツリ関わってきます。本編では語り切れなかった(敢えてか)世界の背景についてモブキャラやメインキャラから学んでいくような仕様で、おつかい感はありますが報酬云々ではなく読み物としての意義があります。特に終盤で発生するものはどこがサブストーリーなんだというくらいクライヴという主人公を軸にしたものが湧いてくるので彼のキャラクター像を知るうえでも見逃せないでしょう。サブクエの配置はおそらくゲーム全体のテンポ感に幅を持たせた結果で、寄り道しないでとにかくFF16を見届けたいという人に対しての仕様かと思いました。ただやるやらないで最後エンディングを迎えた時の印象はかなり異なったものとなるのは間違いないのでガッツリ味わいたいなら回収推奨です。サブクエ同様に重要になってくるのがアクティブタイムロア。これはNPCであるハルポクラテスに旅の経緯を伝えることで読めるようになるヴァリスゼア版Wikipediaです。クライヴの見聞を伝えただけのはずがハルポクラテスの持つ知識が足されてか「え?そうだったの?」みたいな大事なことが書かれていたりするので読んでいると世界観をより深く掘り下げることが出来る仕様になっています。話はそれますがハルポクラテスとはギリシャ神話の神の名で、エジプト神話でいうところのホルス神を指す存在です。月が意味深に描かれる本作において太陽神であるホルスを識者として描く意味などを考えてしまいますね。

 

 本編シナリオについて

 本作のシステムまわりについてざっくり説明しましたが作品の肝となるストーリー自体はどうだったか。なかなかネタバレを控えて語るのは難しい部分ではありますが、この物語には幾つかの重要なキーワードがあります。その一つが「ベアラー」です。ベアラーとは魔法をクリスタルを用いずに使用できる人々を指すのですが彼らはヴァリスゼアにおいて差別的な処遇にあり一般の人々から奴隷として扱われます。道具として活用される一方で存在は疎まれている。そんな彼らにも人として生きていける世界をつくることがシドの願いでありクライヴの大義となっていきます。初めは復讐に生きた青年が奴隷解放のため尽力する中で世界の敵と出会いヴァリスゼアを人として生き抜くために戦う、というのが大まかな流れなのですがテーマがテーマなだけに序盤は暗く鬱屈とした展開が続きます。これ皆んな死ぬのでは?という不安さえ覚えるほど戦記物としてのシリアスさがある。この空気感が先程少し述べた世界の敵に近づくにつれてやや大がかりな話になってくるのですが個人的な話をすると話がでかくなりすぎて前半とのコントラストが濃く分かれてしまったように感じました。ここで首を傾げるかもしれませんがそのまま突き進んでください。クライヴを信じてあげてほしい。最初から最後までクライヴはクライヴ・ロズフィールドなので。ベアラーが奴隷問題を描き、クリスタルが環境問題を比喩する世界で人と自然の抱える課題についてクライヴが出した答え。これがファイナルファンタジー16です。

 

 クライヴ・ロズフィールドについて

 最後に本作の主人公クライヴ・ロズフィールドについて話したいと思います。私が今作で久しぶりにFFをやろうと思った動機が彼でした。好きな方々には申し訳ないですが私が10以降シリーズに触れなかったのは主人公がイマイチに感じてしまったからで実際プレイすれば印象は変わると思うのですがそんな理由があります。ただ16に関してはクライヴが主人公として発表された時に「ヴッッ?かっこよ……」と思いました。私はバットマンがめちゃくちゃ好きなのですが、クライヴのデザインは配色がかなり好みでどことなく影があり、私の好きなダークヒーロー感が滲み出ていたのでそりゃあ好きだよとなってしまったわけです。重い腰をあげて全ての進捗が終わる覚悟で本作を購入しました。いざ対面したクライヴ。ドチャクソガッゴエェエエエ!!! ……すみません。取り乱しました。クライヴという男、身勝手で無鉄砲で弱くて弱くて優しくてだから強い男でした。彼のひととなりを通して魅力的に映る周囲の人々。ラストバトル手前での彼の目に映った仲間たちの姿を見ると自分はクライヴで戦ってきたけどこれだけの人達がしっかりついてきてくれたんだなと思えて感慨深いものがありました。相対する自分達の敵にも彼らなりの矜持や経緯がありますが「そんなもん知るか俺は俺だ」みたいな態度ほんとに好き。理屈とかあるよ。倫理もある。我儘には生きられない。そんな現実があるからこそクライヴの「知るか」が清々しいまである。それが拝めただけでも私はFF16をやってよかったと思います。よねち(米津玄師さん)もうええてとか思ってごめんな。クライヴの物語を締める歌は『月を見ていた』しかなかったです。ありがとうございました。2周目ファイナルファンタジーモードで始めました。敵硬すぎです。しばらくやりません。でもありがとうございました。FINAL FANTASY XVI大好きです。