アントーニオの肉一ポンド

返却期限を過ぎました。

和田島イサキ『セックス』を読む

𝙎 𝙀 𝙓 - セックス(和田島イサキ) - カクヨム

 私は考えていた。何言ってんだこの人。考えてはみたが辿り着きそうになかったので生まれてはじめてマックデリバリーというものを試してみようという気になった。個人情報を入力しながら先程までの考えがよぎり住所を間違えそうになった。こんなのではダメだよ、先ずは腹ごしらえさ、そうだろ松。ところがどっこい注文したからといって3秒で届くか?答えはNOだ。なので待つ間また考える羽目になった。何をかって?そうだな、忘れていたさ。和田島イサキ。知ってる?この人?

 

 私はこのブログを用いて何度も和田島イサキと対決してきた。もはやライフワークと言っていい。空想上の100kg級の和田島イサキがそこにいて『セックス』と題した小説をぶん投げてきた。私はその瞬間に範馬刃牙だった。

 とりあえずもう一周読もうと思い、実際読んでみると些か光明が差した気がした。いったい和田島イサキは何を書こうとしたのか。和田島さん、お久しぶりです。今年もこの季節になりました。リンクは冒頭に貼ってます。読みたきゃそこから飛んでくれ。だがいいか?相手はあの和田島イサキだ。半端な夢の一欠片で不意に誰かを傷つけることが出来ると専らの噂なあの和田島さんだ。じゃあそろそろ行くか。vs和田島イサキ『セックス』……字面がヤベェぜ。

 

私は嘘をつきました、と、その女は言った。

 

 女から嘘をつかれた男はそう言った。この冒頭始まりの一行。もう生粋の和田島フリークならこんだけで気づけるね。いつもの和田島さんだ。おかえりなさい。物語はこの女からパチをこかれた男子学生の語りで整えられている。男は成り行きで女と情事に及ぶ、これだけの話です起きたことだけを文字に起こせば。セックスというタイトルはまるで間違いではなく「ありのままの姿見せるのよ」「ハイ!」「ありのままの自分になるの」「ハイ!」「少しも寒くないわ」「なんなら火照りました!」という具合なので、な の で、分からないのだ。いったい和田島さんはこの『セックス』という物語によって何を描こうとしたのかが。おかげで私は即日二度読みする羽目になり、マックデリバリーまで頼んでしまった。だがおかげで見えたものもあるとは先程も述べたが、厳密に言えば「見えなかった」ものがあるってことだろう。それは何か。ズバリ「セックス」である。この小説にはセックスが見えない。いや事実それが起きたことは説明されているけれど本番自体には詐欺かと訴訟が起こって然りなほどのボカシが入っている。語り手の猿が如き男子学生自身に実感を持たせない。ただただ何やら凄かった風のことがフォークロアとして語り継がれる。そこで私は思いました。この『セックス』って小説の焦点はセックスじゃあねえなと。考えてもみればプラットフォームが天下のカクヨム様(今から媚びても遅くねえよな?)であり、性描写など露骨に描こうものなら即削除対象である。ただかといってコレがその限界に挑戦しようというような態度だったかといえばそうでもないように見えた。主題はもっと別のところにあるのではないかと考えるほうが真っ当な気がした。この物語のウォーリーはどこだ。それは事後の語りの中にいた。

 

「だって。平気でペットボトル共有とか、そういうのなんか、恋人みたいで」

 

やめてほしい。不意打ちでそういうラブコメ展開をされると、こちらもちょっと「あれっ上条って普通に全然アリかも」とか思っちゃうから。恥ずかしい。

 

 恋です。LOVEそう勘違いみたいな話ですがこれは肉欲を取っ払った恋。つまり人間です。すみません些か飛躍した言及になりますが和田島さんはセックスを使って玉ねぎを剥こうとして実際剥きやがりました。へえ、こんなふうに芯の部分抉り出していいんだ、目から鱗じゃん、空気に触れたとこが痛いよってくらい剥き出しの語り。男も女もやけに言い訳がましく、とにかくパイルダーオンにはこじつけて及ぶに及んでそっからようやくトゥンク、恋が始まるんです。これはなんだろう、成長譚?いや何か違うっていうか全然違うんだけど結果的に読者としては達成された何かを見させられた気にさせられてもうさせられ祭りです。

 

——だって、寂しかったから。

 産んだり増えたり地に満ちたりするのもいいけど、それだけじゃちょっぴり寂しいのが人の情というもの。

 

 もうふざけんじゃないよって笑っちゃいましたね。いい!本当にいい着地! 寂しさ。そうかなるほどセンチの!メンの!タル!バカ!おかえり!本当に心配したんだからね!これからもよろしくお願いします。

 

 

追記:物語の文末に説教こく作者はサイコパスと統計データがこれから出る予定です。